エラーも出ずに、案件が止まっていた
当社の話です。当社は制作・デザイン・品質確認・営業の作業を役割ごとに分け、1つの進行表で案件を受け渡しています。 各担当は、進行表の「ステータス」欄が自分の拾う言葉になっている案件だけを一覧に出して作業します。
ある日、品質確認で差し戻した案件が、期日の数日前まで誰にも拾われていないことが分かりました。 差し戻し先には「サンプル制作中」と書かれていました。ところが制作の担当が一覧に出していたのは、 「サンプルが要る」という別の言葉の案件だけ。人が読めば同じ意味でも、一覧の条件には当たらなかったのです。
点検すると、同じ形の穴がほかにも見つかりました。デザインの担当の入口に、納品用の言葉が入っていない。 品質確認へ渡す出口に、品質確認の担当が見ていない言葉を使っている。どれもエラーは出ません。 期日が来るまで、静かに止まるだけです。
このときは期日の前に見つかり、点検で出てきた同じ形の穴もまとめて塞ぎました。いまは各担当が作業を始める最初に、 どの担当の条件にも当たらない案件が無いかを洗っています。
ステータスは「意味が通じる言葉」ではなく「次の人が拾う言葉」で書く
書く人はその場で、いちばん意味が伝わる言葉を選びます。それ自体は正しい判断です。 ただ、次の担当が一覧を絞り込む条件と一字でも違えば、その案件は一覧に出てきません。
ステータス欄を選択式(プルダウン)にすれば、書く側の表記ゆれは防げます。それでも残るのは、 選択肢を誰がいつ増やすかと、増やしたときに次の担当の絞り込み条件を誰が直すかです。 当社の穴も、言葉の一覧には「サンプル制作中」が載っていたのに、制作の担当の条件にだけ入っていなかった、という形でした。
そこで決めたことは2つです。1つは、ある工程の出口の言葉と、次の工程の入口の言葉を、すべての受け渡しで一致させること。 もう1つは、新しい言葉を思いついても、その場では使わないこと。使う前に言葉の一覧と、それを見る担当の条件を先に直します。 あわせて、どの担当の条件にも当たらない案件を洗い出す手順を置きました。
営業の現場でも、同じ形はよく出ます。「提案中」と「見積提出済」の境目が担当ごとに違う。 上長の確認待ちを表す言葉が、上長の見ている一覧の条件に入っていない。 商談のステージを決めたときに、その言葉で誰が一覧を出すのかまで決めていないと、同じ止まり方をします。
以前の流れ
書く人が、その場で
意味の通じる言葉を選ぶ
↓ 次の担当は、自分の決めた言葉だけで絞り込む
- 「サンプルが要る」と「サンプル制作中」が別々の言葉のまま
- 一字違いの案件は、誰の一覧にも出ない
- 止まっていても、進行表は何も知らせない
期日が来て、初めて気づく
変えたあとの流れ
使ってよい言葉を
1枚の一覧に決める
↓ 出口の言葉=次の入口の言葉
- 新しい言葉は、一覧と条件を直してから使う
- 各担当は一覧の言葉で絞り込む
- どの条件にも当たらない案件を定期的に洗う
止まった案件を、期日より前に見つけやすくなる
図:使う言葉を1枚に決め、受け渡しの両端で同じ言葉を使います。
「待ち」には、確かめる方法を一緒に書く
止まりやすいもう1つの場所が「待ち」です。当社では、お客様との連絡をメールからチャットへ移したあと、 チャットに届いたご連絡に丸1日以上気づかなかったことがあります。 届いた返信を見張っていたのはメールだけで、そのチャットは通知のメールを出さない仕組みでした。 連絡の経路を変える判断と、見張る先を変える作業が、別々になっていたのです。 いまは連絡の経路を変えるときは、見張る先を変えるところまでを1つの作業として扱い、同じ日に済ませています。
あわせて、「待ち」と書くときに、いつまでにと、どこを見れば届いたと分かるかを同じ行に書きます。 確かめる方法が書けない待ちは、待っていることになりません。
今週できる3つ
ここだけ持ち帰っても、最初の一歩は踏めます。3つ目は15分で終わります。
1
進行表のステータスの言葉を、全部書き出す
実際に使われている言葉を一覧にして、同じ意味の言い換えがいくつあるかを数えます。言い換えが多い所ほど、取りこぼしが起きやすい所です。
目安20分/材料=進行表の直近1か月分
2
担当ごとに「自分が拾う言葉」を並べて突き合わせる
各担当が一覧を絞り込むときの言葉を聞き、1で出した言葉と並べます。どの担当にも拾われない言葉に印を付けたら、その言葉の案件がいま何件あるかを見ます。
目安30分/材料=1の一覧と各担当への聞き取り
3
「待ち」の行に、期日と確かめる場所を足す
お客様の返事待ち・社内の承認待ちの行すべてに、「いつまでに」「どこを見れば分かるか」を1行ずつ書き足します。書けない行は、待ちではなく止まっている行です。
目安15分/材料=いま「待ち」になっている行
ここまでの3つは、道具を変えずに明日から自分でできます。いまある穴を見つけるところまでは、社内で進められます。
言葉は、体制が変わるたびに増える
見つけたあとに残るのは、言葉の一覧が事業や体制に合わせて増えていくことです。新しい担当、新しい取引先、新しい連絡の手段。 そのたびに一覧と各担当の条件を直す必要がありますが、社内の担当者は自分の持ち場を回しながらになるため、 変更のたびに受け渡しの両端まで確かめるのは後回しになりがちです。
当社が営業支援プロジェクトの進行管理でお受けしているのは、ここです。受け渡しの言葉と条件を最初に一緒に決め、 洗い出しは社内の担当が回せる手順にしてお渡しします。そのうえで、月2回の定例で洗い出しの結果と、 その間に増えた言葉・変わった体制を第三者の目で点検します。契約の間に社内の人だけで回せる形に近づけ、終わったあとも手順として残します。
