7回書き直しても、出せる文面にならなかった
当社で実際にあった話です。ある打ち合わせのあと、その場に出ていない者がお礼のメールを下書きしました。 読み直しと手直しを重ねて7版。それでも、お客様に出せる文面にはなりませんでした。
原因は言い回しではありませんでした。何が決まり、何を持ち帰ったのかを、1行も知らなかったのです。 中身の無いところを文章で埋めようとすると、「近いうちに資料をお送りします」のような、 頼まれてもいない約束に流れていきます。版を重ねるほど、かえって悪くなりました。
足りないのは推敲ではなく情報だ、と分かったので、書き方を決め直しました。 出ていない打ち合わせの文面は、書く前に出席した本人へ3つだけ聞く。 決まったこと、持ち帰った宿題、次に連絡する時期。答えが返ってから、1版だけ書きます。
「ツールを入れている」は「記録が残る」ではない
もう1つ、別の日の話です。当社は打ち合わせの文字起こしにツールを使っています。 ところが、ある打ち合わせだけ記録が1件も残っていませんでした。 ツールの画面を開くと、その予定だけが自動で参加する対象から外れていました。 同じ週のほかの予定は、ちゃんと対象になっていました。
当社が使っているツールでは、この設定が予定ごとに分かれていました。 ツールによって作りは違いますが、分かれている場合は「契約しているから録れている」とは言えません。 しかも予定を入れる人と、あとで記録を読む人が別だと、外れていても誰も気づきません。 気づくのは、記録が必要になった日です。出席者の記憶や先方の議事録から寄せ集めることはできても、 当日の言葉のままには戻らず、手間も当日の何倍もかかります。
いまは、予定を入れたその手で、記録の対象になっているかまで確かめる手順にしています。 下の図は、その前と後の違いです。
以前の流れ
予定を入れる人と
記録を確かめる人が別
↓ 記録の設定は予定ごとに別々
- カレンダーに予定を入れる
- 記録は「ツールがあるから大丈夫」
- 出ていない人が、あとで報告を書く
外れた1件に誰も気づかない=
あとの報告が推測になる
変えたあとの流れ
予定を入れた人が
同じ手で記録の設定も見る
↓ 「入れた」と「録れる」を1セットにする
- 予定を入れる
- その予定が記録の対象になっているかを見る
- 記録はお客様ごとの置き場所へ
出ていない人も中身から書ける=
担当が替わっても話が続く
図:記録の仕組みを増やすのではなく、作る人と確かめる人を同じにします。
記録が無い回は、会社に残らない
これはお礼のメールだけの話ではありません。担当が替わったとき、後任が頼れるのは 前任が残した記録だけです。値引きをなぜ断ったのか、先方の決裁が誰なのか。 こうしたことは資料には書かれず、打ち合わせの中でだけ話されます。
社内に質問できるAIを置く場合も同じです。AIが答えられるのは、どこかに残っている言葉だけ。 録れていなかった回のことは、どれだけ賢い仕組みでも答えられません。 会社に残るかどうかは、打ち合わせの当日に決まっています。
今週できる3つ
ここだけ持ち帰っても回ります。1つ目は10分で終わります。
1
来週の打ち合わせを、1件ずつ記録の設定と見比べる
予定表と記録ツールの画面を並べて、対象から外れている予定がないかを見ます。外れていたら、その場で入れ直します。
目安10分/材料=来週の予定表と記録ツールの画面
2
出ていない打ち合わせの報告は、書く前に3つ聞く
決まったこと、持ち帰った宿題、次に連絡する時期。答えが返るまでは書き始めません。中身の無い文面を急いで出すより、半日待つほうが信頼を削りません。
目安5分/材料=出席者への質問3つ
3
記録の置き場所を、お客様ごとに1つに決める
個人のパソコン、チャット、メールに散らばった議事録を、お客様ごとのフォルダ1つへ。後任が最初に開く場所を決めておくと、引き継ぎはそこから始まります。
目安30分/材料=直近3か月の議事録・文字起こし
ここまでの3つは、道具を増やさずに明日から自分でできます。記録を残すところまでは、これで足ります。
残った記録が、引ける形になっているか
その先に残る問題があります。1時間の打ち合わせの文字起こしは2万字近くになり、議事録は書く人ごとに形が違います。 フォルダにそろえても、後任が「この会社には、なぜ値引きを断ったのか」を知りたいとき、 数十本の記録を頭から読むことになります。 会議ツールや顧客管理の仕組みに記録が溜まっていても、同じことが起きます。
残っている記録から、判断の理由とお客様ごとの約束だけを取り出して、 質問すると出典付きで答えが返る形にする。記録を「残す」ことと「引ける」ことの間には、もう一段の作業があります。 当社が社内AIの構築でお手伝いしているのは、この一段です。
